久しぶりに手塚先生の名作「ブラックジャック」を読み返していました。
「狂犬病」が出てくる回、「なにかが山を・・・」に行き当たりました。
(手塚治虫「ブラック・ジャック」40周年アニバーサリー! | 秋田書店)
貴方の飼っている(一緒に暮らしている)家族である愛しき「わんこ」。
毎年の「狂犬病」の予防接種(プラス、当初における「わんこ」の市町村への登録の申請)。
これらは、貴方が彼ら・彼女らと共に生活していくことを決意した時点において、飼い主さん(親御さん)に求められる最低限の「義務」です。
「ホントに必要なの‥?」
等々について検索したところで、ネット上にはあれこれ、なんだかんだ、の情報が溢れかえっており、いちいち全てを読み込んで、自ら考え、判断しなければいけない‥。
メンドクサイでしょう‥?
ということで以下、「家族の一員」だとか「注射が可哀想」だとかの感情論・心情論は一切省き、「狂犬病」そのものについて述べていきたいと思います。
「オオカミ大好き」の“イヌ派”の立場で。
「狂犬病」とは何なのか?
「狂犬病」というのは、「最も致死率が高い病気」として「エイズ(AIDS)」と共に、ギネス世界記録にも記載されているというホントに恐ろしい病気。
発症してしまうと、その死亡率は”ほぼ”100%。
その治療法が確立されていないため、まずは確実に“死”に至ります。
“ほぼ”100%とするのは例外的に生き延びることができた人がいるからなのですが、世界中で毎年およそ5万5千人という死者数が出ている(厚労省 – 狂犬病に関するQ&A)なか、これまでに報告されている生存者の数は、わずかに「6人だけ」です。
この生存者のうち「5人」が発症前にすでにワクチン接種を受けており、「6人目」のアメリカ合衆国ウィスコンシン州の15歳の少女、2004年10月、ワクチンの接種が無いままに「狂犬病」を発症、にも関わらず回復を遂げた初めての症例として記録が残っています。(by Wiki)
(余談ながら、上記「エイズ(AIDS)」の話。
最近は(マスゴミどもに踊らされ、熱しやすく冷めやすい日本人の特性からなのか)あまり聞くことが無くなってしまったこの言葉。
たまに耳にしても「HIV患者(感染者)」と言い換えられている印象が強いです。
「エイズ(AIDS)」とは、「Acquired Immune Deficiency Syndrome」の略で、「後天性免疫不全症候群」という病気の名前。
「HIV」とは、「Human Immunodeficiency Virus」の略で、「ヒト免疫不全ウイルス」という病原体の名前。
つまり、「HIV患者(感染者)」に発症が見られた場合に初めて「エイズ(AIDS)患者」となるということです。
混同無きよう‥)
さて。
一旦発症してしまうとその治療法は存在しないことから、ただただ死を待つしかないという恐ろしい病気、「狂犬病」。
さらに掘り下げていきたいと思います。
「狂犬病」なんだから「イヌ」から感染する病気??
「ネコ」「コウモリ」なども「狂犬病ウィルス」の宿主(感染源)です。
日本では、「イヌ」以外の「ウシ」や「ウマ」「ブタ」なども「狂犬病」について「家畜伝染病予防法」の適用を受けています。(家畜伝染病予防法「第二条第一項」)
インドでは、世界で最も「狂犬病」による死者が多く約30,000人、ワクチンによる治療を受ける人も年間で100万人という驚異的な数値。
「狂犬病ウイルス」の宿主は主に「イヌ」ではあるものの、「サル」「ウシ」「ウマ」「ネコ」「ヤギ」「ネズミ」「ウサギ」などからもウイルスが分離・同定されているそうです。
アメリカでは、(ヒトへの感染は年間数名ながら)「スカンク」「コウモリ」「アライグマ」「キツネ」などの野生動物で毎年6,000 ~ 8,000件、「ネコ」で200 ~ 300件、「イヌ」で20 ~ 30件の「狂犬病」報告があるそうで、2006年8月にはヒトを噛んだ「ネコ」から「狂犬病ウイルス」が検出され、ニューヨーク市保健精神衛生局により注意喚起情報が発表されました。
こうなるともはや‥。
「全ての哺乳類が感染源」と考えておいた方が無難ですね。
ちなみに「ヒト」も同じく「哺乳類」です。
が、通常は、ヒトからヒトへと感染することはありません。
非常に稀な例として、角膜移植などの臓器移植による感染例があるそうですが、日本ではドナーが「狂犬病」に掛かっているなどという確率はゼロと言い切って良いほどの清浄国ですので、その心配はありません。(なので、仮に「狂犬」のごとき旦那や彼氏に咬まれたとしても全然大丈夫。)
また、輸血により感染したという報告もありませんので、安心です。
気になる「狂犬病」の症状
冒頭、「ブラックジャック」大先生(本名 : 間 黑男 (はざま くろお))は、次のように診断しております。
《水を見るとケイレンを起こす症状といい、イヌのような動作といい、正真正銘の「狂犬病」》
だと。
「狂犬病」 =「恐水症」
「恐水症」(=恐水病 (hydrophobia))とは、水などの液体を飲もうとすると首の嚥下筋にけいれんが起こって強い痛みを感じるために、水を極端に恐れるようになる症状のことをいいます。
同様に、冷たい風に吹かれてもけいれんが起きるため、風の動きに過敏に反応、それを避けるような仕草も示します(恐風症)。
また、瞳孔の反射が亢進されて日光に過敏に反応するようになるため、これを避けるように暗がりでの生活となります。
その他、「唾液の分泌過多」「高熱」「麻痺」「運動失調」「全身けいれん」を起こし、その後、昏睡状態に陥って呼吸障害によって“死亡”します。
「犬に咬まれた!!」 ‥「狂犬病」に感染した可能性は‥?
日本国内においてなら、いくら咬まれても大丈夫です。
特に、首輪にちゃんと「鑑札と注射済票」が装着されている「わんこ」であれば。
どんどん咬まれてやって下さい。
(“咬む”というような究極の状況に追い込まれてしまった「わんこ」。「私は何をしてしまったのか?」もしくは「この子はどんな背景を抱えているのか?」等を念頭において、是非とも血だらけになってもらいたい)
非常に恐ろしい「狂犬病」なのですが、実は、日本においては、厚労省が「わずか7年という短期間のうちに狂犬病を撲滅するに至りました」と豪語しているように(厚労省 狂犬病)、国内では「ヒト」の「狂犬病」の発症例は1956年(昭和31年)以降なく、動物では翌年の1957年(昭和32年)の「ネコ」による感染の報告例が最後なのです。
ただし‥首輪のない「わんこ」に咬まれた場合には要注意。
なぜなら、例えば「ロシア船のイヌの不法上陸」とか。
つまり、外国船によって運ばれてきた“首輪なんぞあるはずもない”「狂犬病」に冒されている(かもしれない)「イヌ」が逃げだし、日本に放たれるということ。
なので、「首輪無し」での「逃走中」の「わんこ」は全て、「ハンター」の「餌食」となります。
って‥でもさぁ‥「逃走中」の「わんこ」ってのは大抵 “首輪のすり抜け” じゃん‥。
いずれにせよ結果、“首輪のない「わんこ」”はみんな「野犬」として捕獲され、駆除(殺処分)されてします。「ニンゲン」によって。
このような状況下では「イヌの帰巣本能」、捨てられたにも関わらず何年も掛けてボロボロなりつつも飼い主のもとに辿り着いてなお、”尻尾を振る”‥いうような感動(?)の話などは、もはや今の日本においては「夢物語」ですね‥。
これって良いことなのか悪いことなのか‥。
海外旅行、これから「イヌ」に咬まれる「ヒト」へ‥
(画像出典 : 厚労省 「狂犬病」 。クリックで画像拡大。)
2006年(平成18年)11月、フィリピンで「イヌ」に咬まれ、帰国後に「狂犬病」を発症して京都市と横浜市の男性が2名死亡という事例がありました。
この「狂犬病」の輸入感染事例は1970年(昭和45年)以降36年ぶりとのこと。(国立感染症研究所 -36年ぶりに国内で発生した狂犬病の臨床経過と感染予防策-横浜の事例 )
留意すべきは(やっぱり)中国。
中国では、「ペット」「食用犬」などで1億5千万頭の犬が飼われているそうですが、そのほとんどが「未登録犬」であり、さらにその数倍の「野犬」が生息しているとのこと。
2008年の北京オリンピックに向けて、中国政府は「狂犬病」撲滅対策に躍起となって、2006年7月、雲南省牟定県、蔓延する「狂犬病」への対策として予防接種済みの「イヌ」を含めた「愛玩・食用・野生、全ての「イヌ」約5万頭」を殺処分するという政策を行いました。
らしいなぁ‥とは思うものの、実にエグ過ぎる‥。
そして殺処分の補償金はわずか5元(2017/9/4 での為替レートで 83.92円)。
殺処分の方法ですが、そのほとんどが撲殺‥。
飼い主の目の前で処分、もしくは飼い主自らに処分するよう命令。これに従わない場合には処罰有り‥。
2008年1月、すべての犬に狂犬病予防接種を義務づけられたそうであるものの、その2008年度の「狂犬病」による死者は2478名‥。
以上、発症後の死亡率ほぼ100%の「狂犬病」についてでした。
もしも。
仮に万一。
日本で「狂犬病」が再び蔓延することとなったとします。
世の中のパニックに巻き込まれた貴方の家族の一員である「わんこ」。
きっと確実に、法的な根拠に基づいて殺処分となる‥かもしれませんよ?
(というか、でなくとも、隣近所、“世間の目”が許しておかないでしょ、たぶん‥)
「狂犬病」の予防接種は必要です。
親御さんが果たすべき最低限の「義務」です。
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