魚介類全滅の危機!! 「赤潮」「青潮」の発生・その違いについて

報道によると2017年7月10日、千葉港(千葉市中央区)で発生した赤潮」を原因とする「腐ったような臭い」が海岸沿いを中心に市内の広い範囲で漂いました。

10日朝、同市環境規制課には市民からの「生ゴミのような臭いがする」「何が原因なのか」などの苦情や質問の電話が相次ぎ、職員が海岸線沿いを目視する等の現地調査などの対応に追われたそうです。

ニュースなどでよく耳にする「赤潮」

これに対し、「青潮」というものがあります。

これらは全くの別物です。

「そりゃ「赤」青」なんだから違うんだろうね」

確かにまあその通りなのですが、では、一体、何がどう違うのでしょう?

詳しくみていきたいと思います。

「赤潮」とは?

「赤潮」とは、植物性プランクトンが異常増殖し、海や川、運河、湖沼等が赤褐色に変色する現象のことをいいます。

生活排水や工場排水の流入によって水中の窒素(N)リン(P)などの栄養塩類が増えて富栄養化状態となり、これらを栄養として植物性のプランクトンの増殖活動が活発化し、水面の色が赤色に染められるほどにまで異常増殖します。

「赤」という水の色のもとになっているのは、植物性プランクトンがもともと持っている色素の色で、これらの生物はクロロフィルの他に、カロテノイドという色素を持っている場合が多く、この細胞がオレンジ色赤色をしているために「赤潮」として目に映るというわけです。

クロロフィル(chlorophyll)

葉緑素(ようりょくそ)のこと。
植物の光合成に必要な化学物質で、太陽光の力を借りて二酸化炭素と水とで、炭水化物(糖)と酸素を作りだします。

植物の葉っぱが「緑色」に見えるのは、この色素を持っていることによります。

カロテノイド(カロチノイド、carotenoid)

「黄色」「橙(だいだい)色」「赤色」などを呈する、天然色素の一群のこと。

これまでに微生物、動物、植物などから750種類以上のカロテノイドが確認されていて、例えばバナナやニンジン・トマト、エビやカニ、それぞれの色もカロテノイド色素の着色によるものです。

「フラミンゴ」のピンク色の羽、白身魚であるはずの「サケ」のサーモンピンクの身。

こちらも同様、エサに含まれているカロテノイドを取り込んで溜め込むことで、鮮やかな色を呈しているのです。

「青潮」とは?

「青潮」とは、海底の酸素が少なくなった水(貧酸素水・無酸素水)が、水面に吹く風や水温の変化などによって表層に上がってきた状態で、そこに多く含まれる硫黄酸化物が海面近くの酸素との接触で化学反応を起こし、海の色が「乳青色」となる現象のことをいいます。

こちらの場合は、海水が白濁することで淡い青色に見えるだけで、実際に青い色をしているわけではありません。

酸素と接触した硫黄酸化物(硫化水素)は酸化されて硫黄に変化、硫黄は不溶性(水に溶けない)なので、微細な粒子となって水中を漂うこととなり、これが太陽光のスペクトルのうちの青色を反射するために青白く見えるというわけです。

もともと海底に存在している深いくぼみや、浚渫工事(しゅんせつこうじ。沿岸の埋め立てや大型船舶の航路を造るための港湾・河川・運河などの底面を浚(さら)って土砂などを取り除く土木工事のこと)が行われた後の大きな穴の中の海水は、ほとんど移動することがないために貧酸素・無酸素状態になります。

また、バクテリアによる海底に堆積した魚介類やプランクトンの死骸などの有機物の分解のためにも酸素の消費は進みます。

この酸素がない状況においても代謝を行うことのできる嫌気性細菌が、分解の過程において多量の硫化水素(硫化物イオン)を生成します。

ちなみに「硫黄」・「硫化」との言葉が出て来れば、温泉地でのあのニオイ、つまりはオナラのニオイと覚えておきましょう。

この流れをもう少しスケールを広げて見てみると、閉鎖的な内湾(東京湾、伊勢湾、三河湾、大阪湾など)は外海との接触が妨げられていることから「流れが滞りやすい = 海水の移動が見られない」という構図になります。

よって上記、湾全体の「溶存酸素量の低下」を引き起こし、結果、「青潮」の発生となるわけです。

 【図解】富栄養化と「赤潮」「青潮」の違いと発生メカニズム

A‥ 生活排水、家庭用洗剤などに含まれる窒素(N)・リン(P)が河川へ。
B‥ 工場排水、化学溶剤に含まれる窒素(N)・リン(P)が河川へ。
C‥ 農業排水、化学肥料に含まれる窒素(N)・リン(P)が河川へ。
D ‥ 「富栄養化」の環境下で植物性プランクトンが異常増殖。
E ‥ 海中の植物も増殖。

よって海中の溶存酸素量の低下がもたらされ「貧酸素水塊」が生まれる。

海の生物たちは呼吸することができなくなって、死んでしまう。

結果として、「赤潮」が出現。

F ‥ 海の生物や植物性プランクトンの死骸が堆積。バクテリアによる分解の際にさらに酸素が消費される。
G ‥ 嫌気性細菌の活動によって硫化水素が発生。
H
‥ 海面にて酸素と触れることで化学反応が起きて硫黄が発生。

そして、「青潮」が出現。

I ‥ 地上に吹く風による海水の対流。
J ‥ 降雨による海水の塩分濃度の低下、酸性雨。
k ‥ 日光(気温)による海水の対流。

以上が、「赤」「青」の違いとその発生のメカニズムです。

「赤潮」「青潮」、結局のところ何がどう悪いのか?

「赤潮」「青潮」がもたらす被害は漁業養殖業など水産業への壊滅的な打撃です。

水産庁の 「赤潮による漁業被害」(平成27年) によると、被害に遭った魚介類はカンパチ、ブリ、カワハギ、イカ、タコ、タイ、フグ、スズキ 、ブリ、クエ、アジ、サバ、アコヤ貝、アワビ、サザエ等々、多岐に渡っています。

「赤潮」という大量増殖したプランクトンにより水中の酸素が減少して呼吸ができなくなったり、魚介類のエラにプランクトンが詰まって窒息したり、一方、毒を持つプランクトンを食べてしまった貝類、養殖のカキやホタテガイ、アサリなどは廃棄する以外ありません。

「青潮」の発生原因はプランクトンではないということは先に述べた通り。
ながら、その環境下では極端に酸素が乏しい水塊が存在しているために、これまた魚介類は生きていけませんし、硫化水素や硫黄といった化学物質が含まれる水中での生存は困難であり、仮にその過酷な状況を乗り越えて生き延びたにせよ、そのような魚介類を食すわけにはいきません。

つまり、2013年12月、ユネスコ無形文化遺産に登録された我が国ニッポンが誇る「和食」、そのメインともいえる水産物が「手軽に気軽に安価で食べられなくなくなるかも‥? 」ということです。


東京都内湾では「赤潮」の発生が慢性化しており、特に夏場は「赤潮」状態が定常化しているそうです。(東京都環境局)

恐い‥。

これだけ頻繁に、当たり前のように「赤潮」「青潮」が発生する海域というのは、それだけ海水の富栄養化が進んでいるということです。

ここまで読んで頂いた方には既にご理解頂けると思いますが、「赤潮」「青潮」も、そのメカニズムからしてキレイな海域での発生は有り得えない異常現象なのです。

大自然の摂理に逆らうニンゲンがとった行動により引き起こされた「異常」。

「どうすればいいのか?」「何をすべきか?_」

もっとちゃんと考えなきゃ、と思います。

もしも「地球上の生き物の単なる一員」としてのニンゲン、これからも種としての生存を望むのであれば、ですが。

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