もしも実際に、自分自身が雪崩に巻き込まれたら‥‥。
最高時速200㎞ものスピードで襲いかかってこられ、下手をすると1分も経たないうちに数トンの雪の中に埋もれることがあります。
これだけ聞くと基本、「もうダメ」と思ってしまいますよね‥。
ちなみに、その死因の詳細についてはご存じでしょうか?
雪崩による死因の4分の3以上が圧死を含めた窒息死なのです。
統計的にも雪崩埋没時の死因は、窒息が75〜94.6%、外傷死が5.4〜23.5%、低体温症が1%との報告があります。
(圧死とは‥胸部あるいは胸腹部が圧迫され、呼吸運動が障害されて窒息死すること)
雪崩に遭遇しても生き延びるためのマニュアルがあります。
どのようにして雪崩から生き延びるか。
現時点おいて、あなたならば、どう行動しますか?
「表層雪崩」と「全層雪崩」
雪崩は”すべり面”の違いによって大きく「表層雪崩」と「全層雪崩」の2つのタイプに分けられます。
表層雪崩 | 全層雪崩 | |
---|---|---|
概要 | 古い積雪面に降り積もった新雪が滑り落ちる。 | 斜面の固くて重たい雪が、地表面の上を流れるように滑り落ちる。 |
主な 発生時期 | 低気温で降雪が続く1~2月の厳寒期。 | 気温が上昇する春先の融雪期。 |
速度 | 新幹線並み (時速100~200キロメートル) | 自動車並み (時速40~80キロメートル) |
到達範囲 |
(参照 : 表層雪崩と全層雪崩の違いは?【PDF】 – 国土交通省 )
その他の雪崩の基礎知識については、以下のリンクをご覧ください。
全国地すべりがけ崩れ対策協議会「雪崩対応安全ガイドブック」[PDF]
雪崩に遭っても生き延びる方法
雪崩発生に気づいたらただちに叫ぶ
雪山をたった一人で登山する‥ということはまずないでしょう。
すぐに雪崩の発生を仲間に知らせなければなりません。
その仲間の一人一人があなた自身のもっとも身近な救出者となるのですから‥。
雪崩に対して横に移動する
最も大事なことは「雪崩に流されないこと」です。
雪崩は流れの中心付近が最も速く動いており雪の量も最も多いので、発生地点があなたのいる場所より上なのか下なのか、近いのか離れているのか等に関わらず、流れの本体に巻き込まれないようにする最良の戦略は、とにかく横向きに動くことです。
これについては容易に想像がつくでしょう。
あとは「いかに素早く行動できるか」 です。
何かにつかまる
もはや雪崩を避けることができないとなった場合、なんとか岩や頑丈な樹木を探してつかまってください。
「つかむだけ」というこの対処法の有効性は、雪崩の規模、もしくはその位置に大きく依存します。
大規模な雪崩となれば地面から木や岩を切り裂くほどの力を持っているため、人の力などは全く無力ながらも、規模が小さくてさほど強力ではない雪崩や、雪崩の本体から離れた立ち位置にある場合などには、あなたの生命を救う有益な行動となります。
この行為により、雪崩本体の通過をある程度にせよやり過ごせるかもしれませんし、結果、雪に埋もれずにすむ、もしくは少なくとも深くは埋もれない可能性は高まります。
なんにせよ、瞬時に判断しなくてはならない緊急事態、まずは「行動せよ」です。
重い装備はすべて捨てる
上記、雪崩による死因のトップは雪の重量による圧死としての窒息死です。
これを避けるためには、できる限り雪の表面に留まり続けること以外にありません。
重量物であるバックパックやポール、ストックなどを身につけていると、船でいう重いアンカーと同じく一定範囲内に動きを止められてしまうこととなり、またあなたの体を雪深く沈めていくことにもなります。
「身軽になってからの避難」が生き延びるチャンスへのキーワードです。
生存装置はすべて所持しておく
スキー・スノボ・登山等々。自然の脅威の代表格の一つである雪山に歩を進める以上、必ず所持すべきものは「アバランシェ(雪崩)・ビーコン」です。
(画像をクリックすると検索結果のページが開きます)
簡単に言うと、個人情報つきGPS発信器のことで、「ピーコ・ピーコ」のような無線周波数の無機質な発信音(実際にはあなたの命の鼓動のメッセージそのもの)をその受信機または別のビーコンに送信する器機です。
この音を頼りにすることで救助者は、埋もれた雪の下のどこに被災者がいるのかを正確に特定することができます。
その他、トランシーバー、プローブ(探針。折りたたみを伸ばすと一本の細い棒になる)、スノーショベル、携帯電話など「生存装置は絶対に手放さない」ように。
プローブはこちら。
雪の中で泳ぐ
雪崩の流れに引きずられてしまったことが分かったら、雪の下深くに埋もれてしまうのを避けるため「雪面」を目指して雪の中で泳ぎます。
人間の体は雪よりもはるかに密度が高いので、すべり下っている雪崩の中にいて少なくともじたばたしなければ確実に、沈みます。
水泳の要領で足を蹴り、腕を振り回して身体を浮かせ、できるかぎり雪の表面近くに留まることを意識しながら「泳いでください」。
その際、どちらが雪面なのか? については「唾液」が役に立ちます。水中において、その上下を判断するために「あぶく」を利用するのと同様、液体がどちらが流れるのか?によって見極めましょう。
また、とるべき理想の姿勢の最終形は、「片方の腕を頭の上にまっすぐ伸ばし、もう片方は顔面を覆うように置く」です。
雪崩がおさまった後、上手くいけば伸ばした片手が雪面上に出ているかもしれません。もう片方の顔面を覆った腕(ひじの裏側で顔面を覆うイメージ)で、呼吸するスペースを確保することになります。(後述)
まさに一瞬の勝負の状況下、これら全てを完璧にこなすことなど困難とはいえ、「知っているか知らないか」=「生きるか死ぬか」であることはご理解頂けることとは思います。
雪に埋もれても生き延びる方法
さまざまな抵抗を試みたものの、雪の中に埋もれてしまいました。
しかし、まだ、あなたは生きています。
顔の周りにエアポケットを掘る
雪崩が止まると、雪はまるでコンクリートのように固まった状態で落ち着きます。
こうなると、わずか30㎝程度の深さでも身動きは一切とれません。それよりも深いところに埋もれてしまった場合などは、自力で外に脱出することなどはまず不可能。
唯一とれる手段としては、仲間を筆頭とした救助者が掘り起こしてくれるまでの間、呼吸を充分に確保して窒息死を避けることのみ、です。
スノーショベルなどは使える状況にはないはずなので、顔面、鼻と口の近くに用意しておいた片腕でエアポケット(呼吸のための空間)を掘ります。
ポイントとしては、巻き込まれた後、雪崩のスピードが落ちてきたことを感じた際に必ず深呼吸をしておくことです。
流れがおさまりきってしまう前に息を深く吸い込んで止め、胸を大きくふくらませる。
この抵抗によって、身の回りを徹底的に固めようとする雪に対して呼吸のためのスペースを確保できます。(このスペースがなければ、呼吸をするため胸を広げることさえできなくなって、死にます)
「まずは落ち着く」ということを意識する
雪崩が完全におさまったら、まずは落ち着きましょう。
なかなか厳しい状況とは思うものの‥空気と体力の節約が重要です。
自力での脱出というのは無駄な試み、パニックを起こしてあれこれ行動を取ると、折角のエアポケットを崩壊の危険にさらしたり体力を消耗したりと、結果待っているのは死のみです。
「落ち着いて救助を待つ」。
「アバランシェ(雪崩)・ビーコン」を頼りに必ず、仲間たちがあなたを探していてくれていますから‥。
「時間がすべて」。
よくニュースなどで山岳救助隊がどうのと流れていますが、基本的には救助などではなく、遺体回収がその役目です。
助けを呼びに行ってる時間などないので‥。
マスゴミどもは相変わらず、これらの事実については報道しませんが‥。
最期に、雪崩の死因と生存率 を紹介しておきます。
以上、その理由はともかく、何故か生き延びてこの世に戻りたいのならば、是非とも参考にしてもらいたいと思っています。
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