すっぽんに含まれる成分(アミノ酸編)
全20種のアミノ酸
アミノ酸とは、筋肉、骨、皮膚、血液、脳、内臓、神経、毛髪など、人体のたんぱく質を構成する最小単位の成分です。
アミノ酸は、自然界には500種類ほど存在するものの、我々ニンゲンの生命を維持するために必要なたんぱく質を構成しているアミノ酸の数は、わずか20種類のみ。
これが数個から数十万個の数で、複雑に組み合わされてタンパク質ができあがります。
食事で肉や魚などからたんぱく質を摂取すると、それが20種類のアミノ酸に分解されてその後、体内で再びたんぱく質が合成されます。
アミノ酸は、地球上すべての生き物の中に存在している生命の根源となっている成分で、人体は約70~80%が水分、20~30%がたんぱく質で構成されていることから、”ニンゲン =アミノ酸の集合体“といえます。
全身のたんぱく質は約1ヶ月の周期で新しくなり、一部は再利用されるものの約50%は新規のたんぱく質と入れ替わります。
ニンゲンの身体を構成しているたんぱく質は、日々、分解と合成を繰り返しているため、健康な体を維持するためには常に、たんぱく質(アミノ酸)の摂取・補給するが必須です。
《必須アミノ酸》と《非必須アミノ酸》
人体のたんぱく質を構成している20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸は、体内で合成することができません。
これらを《必須アミノ酸》といい、食べ物の摂取を通して外部からの補給で身体の正常な機能を維持していく必要があります。
このバランスが崩れた状態では正しくたんぱく質を摂取しているとはいえず、いずれかが不足した状態が長く続くと、やがてどこか身体に不具合が出てしまうこととなります。
(参考 : 「《アミノ酸スコア=100》 とは?」)
タンパク質を構成する20種類のアミノ酸
必須アミノ酸 | 非必須アミノ酸 |
---|---|
合成は不可・外部から補給 | 合成は可・摂取を推奨 |
トリプトファン リシン(リジン) メチオニン フェニルアラニン トレオニン(スレオニン) バリン ロイシン イソロイシン ヒスチジン | グリシン |
※ アルギニンは小児では必須アミノ酸に含まれる
必須アミノ酸の効能と食品
必須アミノ酸 | 効能 | 食品 |
---|---|---|
トリプトファン | セロトニンの材料、ナイアシンに変化、精神安定、鎮痛・催眠効果 | 牛豚レバー、豚ロース、鶏むね肉、筋子、カツオ、マグロ、タラコ、イワシ、卵、牛乳、チーズ、ごま、大豆、バナナ |
リシン (リジン) | 体の組織修復、脂肪燃焼 | アジ、カツオ、マグロ、ブリ、ハマチ、しらす干し、タラコ、凍り豆腐、レバー、卵、牛乳、大豆、鳥のむね肉、豚ロース、牛(サーロイン)、湯葉 |
メチオニン | たんぱく質の合成開始、肝機能の改善、抗うつ | 鶏むね肉、牛肉、羊肉、マグロ、かつお節、しらす干し、筋子、大豆、凍り豆腐、ゴマ、牛乳、チェダーチーズ、レバー、小麦 |
フェニルアラニン | 神経伝達物質の材料、鎮痛作用、抗うつ効果 | 牛レバー、鶏むね肉、マグロ、卵、大豆、凍り豆腐、小麦、ゴマ、チーズ、アーモンド、落花生、カボチャ、ジャガイモ |
トレオニン (スレオニン) | 成長促進、脂肪肝の抑制 | 鶏むね肉、豚ロース、カツオ、筋子、しらす干し、大豆、湯葉、チーズ、卵、ゼラチン、サツマイモ |
バリン | 筋肉強化、肝機能の改善、成長促進 | 牛豚レバー、カツオ、マグロ、筋子プロセスチーズ、大豆、小麦、落花生、鶏肉 |
ロイシン | 肝機能向上、筋肉維持、たんぱく質生成促進 | カツオ、マグロ、アジ、サケ、しらす干し、鶏むね肉、牛肉、レバー、ハム、卵、大豆、小麦、湯葉、牛乳、チーズ |
イソロイシン | 筋肉強化、成長促進、神経機能補助、血管拡張肝、機能向上 | 牛豚レバー、豚ロース、鶏むね肉、卵、マグロ、サケ、大豆、牛乳、プロセスチーズ |
ヒスチジン | 白血球の生成に関与、成長期に必須(成人は合成可) | カツオ、マグロ、ブリ、ハマチ、サバ、サンマ、イワシ、鶏むね肉、ハム、大豆、湯葉、チーズ |
《アミノ酸スコア=100》 とは?
アミノ酸スコアというのは《食品に含まれる必須アミノ酸の構成比》によって算出された数値のことで《食品に必須アミノ酸がどれだけバランスよく含まれているか》を数値化したスコアのこと。
アミノ酸スコア100という食品は、9種類の必須アミノ酸がすべて100%以上含まれている理想的なアミノ酸組成を持つ食品を指します。
必須アミノ酸は、摂取したもののうち、最低のレベルの摂取量しか活用されない性質をもっています。
例えば、ある一つの必須アミノ酸が78%しか含まれていない食品の場合、残りの必須アミノ酸がどれだけ多く含まれていようとも、その不足した78%分までしか他のアミノ酸も働かない(力を余らせてしまっている)ということ。
こうした時には他の食品から不足している必須アミノ酸を補給する必要があります。
これを理解するためによく用いられるのが「ドベネックの桶」というもので、栄養摂取においては「桶の理論」、「アミノ酸の桶」とも呼ばれています。
図において、桶の板がそれぞれの必須アミノ酸を表していて、どれか一つでも欠けていると水はいつまで経っても一杯にはならない。つまり、たまった分だけ、一番少ないAのアミノ酸(=第一制限アミノ酸)の部分だけを使ってたんぱく質を作るしかないと言うこと。
これがアミノ酸スコアを端的に表現している「桶の理論」です。
上図のB、これがアミノ酸スコア100の状態ながら、仮にもし突然一本の板だけが短くなって半分になってしまった場合、スコアは50に下がります。
この理論によって”弱点”を見いだし、いかにしてその部分を補強するか(何を一緒に組み合わせて食べればいいか)を考えれば良いというわけです。
アミノ酸スコアは1973年FAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が合同で発表した、必須アミノ酸の理想的な分量を記した「アミノ酸パターン」(一般用)を基準として算出された値のことです。
制限アミノ酸の量÷制限アミノ酸のアミノ酸パターン量) = アミノ酸スコア
制限アミノ酸(第一制限アミノ酸) = 最少含有比率のアミノ酸
1985年には、FAO/WHO/UNU(国連大学)の合同で、年齢区分別のアミノ酸パターンが発表されました。
《アミノ酸スコア100》の食品
代表的なアミノ酸スコア100の食品の紹介で「卵」「肉類」「牛乳」「魚類」のように書かれてあるのを見かけるものの、これでは良く分からない‥と思ったので調べてみるとFAO/WHOのレポートからの国立栄養研究所の論文を発見。
しかし、やはりちょっと専門的すぎて分かりにくいので、簡単に一覧表にまとめてみました。
食品名 | アミノ酸スコア |
大麦 | 58 |
精白米 | 61 |
そば(全層粉) | 100 |
とうもろこし(コーンクリッツ) | 31 |
ライ麦(ライ麦粉) | 64 |
小麦(強力粉) | 36 |
さつまいも | 83 |
じゃがいも | 73 |
アーモンド | 47 |
落花生 | 58 |
あずき | 91 |
えんどう | 77 |
だいず(全粒) | 100 |
あじ | 100 |
いわし(まいわし) | 100 |
かつお | 100 |
さけ | 100 |
まぐろ(ほんまぐろ赤身) | 100 |
あさり | 84 |
はまぐり | 89 |
いか | 71 |
たこ | 67 |
えび(いせえび) | 77 |
かに(毛がに) | 74 |
牛肉(サーロイン、脂身なし) | 100 |
豚肉(ロース、脂身なし) | 100 |
鶏肉(むね) | 100 |
鶏卵 | 100 |
牛乳 | 100 |
人乳 | 100 |
キャベツ | 53 |
きゅうり | 66 |
だいこん | 28 |
トマト | 51 |
なす | 78 |
にんじん | 59 |
ほうれんそう | 64 |
うんしゅうみかん | 51 |
バナナ | 64 |
りんご | 56 |
しいたけ | 78 |
こんぶ | 78 |
わかめ | 100 |
玄米 | 68 |
ビーフン | 62 |
食パン | 44 |
小麦粉(薄力粉) | 44 |
小麦粉(強力粉) | 38 |
そうめん | 41 |
うどん(生) | 41 |
コーンフレーク | 16 |
栗 | 64 |
ごま | 50 |
くるみ | 44 |
枝豆 | 92 |
おから | 91 |
豆乳 | 86 |
油揚げ | 77 |
しょうゆ(濃口) | 22 |
あなご | 100 |
あまだい | 100 |
あゆ | 100 |
かじき | 100 |
かれい | 100 |
かつお節 | 100 |
きす | 100 |
きんめだい | 100 |
たら | 100 |
にしん | 100 |
はも | 100 |
ぶり | 100 |
ふぐ | 100 |
うに | 82 |
かまぼこ | 100 |
ほたて | 71 |
あわび | 68 |
鶏レバー | 100 |
豚レバー | 100 |
馬肉 | 100 |
山羊肉 | 100 |
ロースハム | 100 |
ベーコン | 95 |
生クリーム | 100 |
脱脂粉乳 | 95 |
ヨーグルト | 100 |
ナチュラルチーズ | 92 |
ブロッコリー | 80 |
にら | 77 |
とうもろこし | 74 |
かぼちゃ | 68 |
アスパラガス | 68 |
枝豆 | 97 |
ひよこ豆 | 69 |
いんげん豆 | 68 |
グリーンピース | 68 |
豆腐 | 100 |
さんま | 100 |
サーモン | 100 |
やりいか | 71 |
ウィンナー | 100 |
プロテイン | 100 |
プロセスチーズ | 91 |
1985年 アミノ酸スコア データ
1973年 アミノ酸スコア データ(と思われる)
出所不明のデータ
主要食品群のアミノ酸スコアと制限アミノ酸
よく「肉類」「魚類」「乳製品」などと大まかな分類で紹介されていているだけで良く分からなかった部分をまとめたのが、以下の表。
この表から、第一関門(第一制限アミノ酸)・第二関門(第二制限アミノ酸)で、どのアミノ酸を一緒に摂取すれば「アミノ酸スコア=100」というゴールにより近づけるか、が読み解けることになります。
例えば「穀類」。第一関門でのスコアは「54」程度でしかなかったものの、Lys(リシン。アミノ酸の略号については表の下にまとめてあります)を補給してやれば一気に第二関門でのスコアが「85」にまで跳ね上がることが分かります。
前述の必須アミノ酸の効能と食品と併せてご覧ください。
食品群(食品数) | アミノ酸スコア(範囲) 第一制限アミノ酸(食品数) | 第二制限アミノ酸のレベル(範囲) 第二制限アミノ酸(食品数) | |
---|---|---|---|
穀類 (9) | 54 [28~100] Lys (8) | 85 [47~100] Thr・Trp (4)、Leu (1)、 (3)Lys (13)、AAA (7)、His (2)、Ile(1) | |
いも類 (4) | 74 [53~86] Lys (3)、Leu (1) | 86 [56~100] Leu(3)His (1) | |
種実類 (12) | 57 [39~83] Lys (11)、AAA (1) | 82 [68~100] Thr (6)、Leu (3)、Lys・Trp (1) | |
豆類 (7) | 91 [73~100] Trp (5) | 96 [81~100] SAA・Leu (1) | |
魚介類 | 一般魚類 (46) | 97 [81~100] Trp (24) | 100 |
貝類 (11) | 79 [61~89] Trp (8)、His (3) | 89 [67~100] Leu (4)、AAA・Trp (2)、His (1) | |
軟体動物 甲殻類 (10) | 79 [54~100] Trp (6)、Leu (3)、His (1) | 93 [56~100] AAA (4)、Lys (1) | |
獣鳥鯨肉類 (11) | 100 | 100 | |
卵類 (3) | 100 | 100 | |
乳類 (5) | 100 | 100 | |
野菜類 (35) | 64 [28~100] Leu (20)、Lys (6)、SAA (4)、AAA (3)、Trp (2) | 71 [29~100] Lys (13)、AAA (7)、Leu (5)、Trp (4)、Thr (3)、His (2)、Ile(1) | |
果実類 (18) | 51 [31~95] Leu (8)、AAA (6)、Trp (4)、Lys (8) | 56 [36~98] AAA (6)、Lys (4)、Leu・Trp (3)、SAA・Thr (1) | |
きのこ類 (3) | 79 [78~82] Leu (2)、AAA (1) | 83 [79~88] Lys・SAA・AAA (1) | |
海藻類 (4) | 77 [58~100] Lys (2)、His (1) | 89 [79~100] His (2)、Lys・AAA (1) |
栄養関連の情報には必ずといっていいほど顔を出す常連さん。
すべてが揃ってる栄養素の塊で当然ですよね。
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